「救急車を呼ぶしかない…」在宅介護の現場で救急要請が増えるリアルな理由

在宅療養や介護の現場では、病状の変化に伴い病院受診が必要になる場面が多くあります。しかし現場では、緊急性の低い状況での救急車利用が課題となっています。
本記事では、現役訪問看護師の視点から実際にあった事例を紹介し、救急要請の現状と対策について解説します。

※本記事に登場する事例は、プライバシー保護および個人特定防止のため、一部事実を改変・抽象化して掲載しています

事例①心不全の在宅療養で介護タクシーが手配できず救急要請したケース

心不全 90歳 男性 Mさん 一人暮らし、遠方にお兄様ご健在

下肢浮腫が増大して、お薬管理や状態観察のため訪問看護開始となりました。

足の浮腫みがかなりひどく、呼吸状態の悪化もあり、利尿剤が開始されていました。歩くのもままならず、キズもできておりそこから汁(滲出液)も出ていている状況でした。

当初は毎日訪問していました。3食カップラーメンでも良いと言う方でしたので、お食事の内容から改善してもらうように指導しました(自炊はせずお店のお惣菜購入でしたが)。日々の買い物などはヘルパーさん利用していたため、ヘルパーさんにも一緒に食事指導しました。

また、毎日 足浴など保清に努めました。

しかし、浮腫みはなかなか減らず、お薬の追加などの影響で、腎機能・肝機能が悪化。

心不全で浮腫みがひどく浸出液も出ている下肢の写真
心不全、腎機能低下により浮腫んでいる下肢

そのまま在宅では限界との判断で、入院目的で主治医が紹介状を書き、その病院を受診するように言われました。

ご本人の意識はしっかりされており、車いす移乗も出来ていました。

本来であれば、介護タクシーを利用し受診すべきです。

しかし、ヘルパーさんの付き添い困難やご家族の不在、近日の介護タクシーの予約が埋まっている、介護タクシー代金が高くつく

などの理由で、ケアマネジャーさんが救急要請。まさに、タクシー代わりの救急車利用です。

事例②緊急性のない外来受診で慌てて救急要請してしまったケース

認知症 Ⅱ型糖尿病 97歳 女性 Aさん

長年の糖尿病の影響で、下肢閉塞性動脈疾患で足の動脈のをフウセンで膨らませる手術を受けられた方です。お歳のこともあり、認知症もあり、近所に住む娘さまは在宅看取りの希望をされていました。

徐々に食事量も低下しており、点滴をしながら過ごされていました。

フウセンの手術を受けた足は、褥瘡が出来ており毎日処置を続けていました。日に日に足の色が暗紫色を呈してきており、循環不全が疑われました。

ご本人は、痛みもほとんどなく穏やかに過ごされていました。

ある日、在宅医師の訪問診療時に医師より「以前手術した病院に連絡しておくので担当医がいる日に外来受診するように」と言われました。

さて、ここからです。緊急性はない状態でしたが、娘さまが慌てて救急要請。まさに、タクシー変わりで早とちりの利用です。

事例③年末の症状悪化と家族不在で緩和病院への移動手段として救急車を利用したケース

進行食道癌 77歳 男性 Kさん

進行性の食道がんで、抗がん剤や放射線治療をされていましたが、根治の見込みは厳しく、ご本人の延命治療の希望はなく、積極的な治療はしない(BSC)の方針となりました。

予後は月単位で3-6か月、1年は厳しい見込みと医師から説明を受けていました。

ご本人は在宅での加療を希望され訪問看護開始。独居で身寄りもないため、最終的には緩和病棟への入院を希望されていました。

在宅では主に、保清の援助と痛みのコントロールでした。しかし、疼痛コントロール不良で医療用麻薬の貼り薬を日に日に増量、レスキュー(痛み止め)のお薬も1日5-10回服用されている状態でした。不安も強く夜間の痛みも強く、不眠の状態が続いていました。

疼痛部位は心窩部と右側腹部で、特に空腹で痛みが増強するため、時間をかけて食事摂取されていました。(空腹時間を作らないように)

ご本人の強い希望で、補助栄養としての点滴希望され開始。ご本人は点滴のカロリーupを希望されていましたが、下肢浮腫の出現もあり在宅では様子をみていました。

ある日、「先生に言ってくれ!!胃が破裂しそうや!!何とかしてくれ」「痛み止め(レスキュー)飲んでるけど効かない!もう入院させてくれ!」と訴えあり。夜間不眠と不安で疼痛増強あり。

主治医より、緩和病院問い合わせされ、(事前に面談を受けていたため)入院受け入れ可能と返事あり。

さて、ここからです。ご家族おらず、年末の出来事だったためヘルパー事業所が休みでした。ご本人の意識はしっかりしており車いすなど移乗可能でありましたが、移動手段がなかったため救急要請し入院となりました。

救急車の有料化や代替手段の必要性

このように、タクシー代わりに救急要請する場面が、ある一定数あります。おそらく、救急隊の方にインタビューすると、こんな場面は日常茶判事だと言われるかもしれません。

私は救急車を有料化に賛成です。

救急要請前にいったん立ち止まり、本当に緊急か、介護タクシーや一般タクシーの利用はできないか、など考えることにつながると思います。

もちろん、緊急性の高い病気が疑われる場合には、躊躇せず要請していただくようにお願いします

多くの方は、無料だし早いから利用する、という安易な考えが少なからずあるのだと思います。特に、ご家族が身近にいない患者さまの場合には、移動手段がなくどうしてもこのような判断になる場面が多いと感じます。

ケアマネージャーさんやヘルパーさんも多忙で業務の中での受診付き添いとなると、介護の点数などの問題もあり、すぐの付き添い受診は難しいことが多いです。

1. 主な国の救急車費用と制度

  • アメリカ(有料)
    • 費用: 1回あたり約5万〜15万円以上(搬送距離や処置内容、自治体により異なる)。
    • 特徴: 消防署運営だけでなく民間会社が運営していることも多く、保険が適用されない場合は非常に高額請求となります。そのため、軽症・中等症ではUberなどの配車アプリで病院へ向かう人が増えています。
  • フランス(条件付き無料 / 有料)
    • 費用: 重症時や医師が必要と認めた場合は無料。自己都合や軽症、民間救急車の場合は有料(約数万円〜)。
    • 特徴: トリアージが徹底されており通報段階で医師(SAMU)が緊急性を判断し、派遣する車両(公的救急車・民間タクシー・医師同乗車など)を振り分けます。
  • シンガポール(条件付き有料)
    • 費用: 緊急性が高い場合は無料。非緊急(軽症・タクシー代わりの利用)と判断された場合は約10,000〜15,000円程度の利用料が発生。
    • 特徴: 不適切利用を未然に防ぐため、明確なペナルティ料金設定が導入されています。

シンガポールのように【緊急時は無料、非緊急・タクシー代わりの利用は有料】という選別型の有料化を行っている国もあります。

また、フランスのように、通報段階で適切な移動手段(民間救急やタクシー)に振り分ける仕組みのように、日本でも#7119の活用や民間救急の充実が必要だと考えます。

例えば、病院からスタッフ付きでお迎えにきてもらえたり、準救急車の扱いで有料の介護救急車などが存在したら、救急車の利用は減るのではないかな、と考えます。もしくは、介護タクシーの24時間体制の実施なども救急車利用減少の手助けになるかもしれません。

そんな、未来が来るといいな、思う今日この頃です。

救急車を呼ぶか迷った時の相談窓口

  • 救急安心センター(#7119): 救急車を呼ぶべきか迷った際の電話相談窓口
  • 救急受診アプリ「Q助」: 該当する症状を選択して緊急度を確認できるツール
  • 民間救急・介護タクシーの事前登録: 非緊急時の移動手段として事前に事業者をリストアップ

※当ブログの内容は現場での体験談や考察であり、緊急時の判断基準を示すものではありません。迷う場合や緊急時は状況に応じて受診または#7119等へご相談ください

執筆者プロフィール

mikakoro 在宅医療の現場で働く現役の訪問看護師です。 「おうち療養ガイド」として、床ずれ(褥瘡)ケアや日々の在宅介護で直面する疑問・不安を解決するためのヒントをお届けしています。家族だけで頑張りすぎない、無理のない在宅介護を応援します。

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