ある日突然、体調がわるくなった場合、病院に行って治療をうけるという選択肢があります。しかし、それを拒否してご自宅で最期まで過ごす、という選択をされ、ご自宅で最期を迎えた方がいらっしゃいます。在宅看護に携わってきた中の、実際にあった事例をご紹介いたします。
※本記事は訪問看護師としての個人のケア体験に基づく記録であり、医療的な処置や判断を推奨・保証するものではありません。ご家族の療養や医療選択については、必ず主治医や担当ケアマネジャーにご相談ください。
【症例】嘔吐と食欲不振でも入院を拒否された88歳Kさんの経緯
ある日、突然の緑色の嘔吐、食欲不振で体調が悪くなり、命に関わるかもしれない状況になった88歳女性のKさん。
医療従事者としては、消化器系の病気があるはず、となんとなく分かります
このままでは、状態の改善は望めないため検査を勧めます
きっと、検査して原因を突き止められれば、(手遅れの癌でなければ)ある程度改善はすると考えていました
しかし
「前に入院したときに酷い目にあった。2度と入院はしない」と、かたくなにkさんは言う
食事はのどを通らず、緑色(胆汁用)の嘔吐を繰り返しており、状況は良くないです
何かしら原因を突き止め治療しないと治ることはない、と医療従事者として分かっています
「もう88や、ええんや、もう。入院するくらいなら苦しくても家で死ぬわ」と。
Kさんの生き様とご自宅での過ごし方
もともと、お一人でひっそりと暮らしておられたkさん
身寄りなく、お一人暮らしであったため、主治医の先生から、週に1-2回の訪問看護と毎日の訪問介護を勧められ、サービスを利用されていました
美空ひばりさんが大好きで昔のポスターやCDなどのもたくさんコレクションされている
戦後の生まれで、大変な時代を過ごしてこられ、多くは語りませんでしたが
よく「あなた達はこんな幸せな時代に生まれたんだから、人生楽しんでよ」と言われていました
ご本人の強い意志による入院拒否のため、ケアマネージャー・主治医・訪問看護・訪問介護など体制を整え連携したうえで
このままご自宅で最期まで過ごしてもらうこととなりました。
食事ほとんど喉を通らず、食べると吐く
点滴をしながら2ヶ月が経ちました
トイレにも行けず寝たきり状態に。
それでも意識はしっかりしています
弱音や文句は一度もなく
ご自分の身体の変化を、受け止められていました
毎日、ヘルパーさんと訪問看護師の訪問のみで、それ以外はお一人で過ごしておられました
ベッドから動くことはほとんど出来なくなっていたので、ベッドの手の届く範囲に必要な物を置いておきました
特に、困った様子も寂しい様子もなく、日々を淡々と過ごされていました
苦しい様子もなく、痛みもなく過ごせていたのは良かったと思います。
もし、ご家族がいればこんな風にご自宅では過ごせなかったのではないかと私は思います
日に日に弱っていく様子を受け止められるご家族はどれほどいらっしゃるでしょうか
ほとんどのご家族は、入院をさせたいとご本人を説得させたでしょう
しかし、身寄りのないKさんはご自分の意思で、嘔吐を繰り返しながらもご自宅で過ごすことができていました
「自然に逝きたい」点滴中止から最期までの経過
この年代の女性は、本当に強いなと思います
決意は揺らがない
自分で決めたことだから。
点滴を止めてから10日後に、暗赤色の嘔吐をして意識消失
翌朝、ヘルパーさんが訪れたときには冷たくなっておられました。
最期は、1人で寂しくなかったかな
でも、家で最期ゆっくり過ごせたから、良かったのかな
医療従事者としては、きちんと検査をして治療できていたらもっと生きることはできていたのではないかと考えます
しかし、Kさんの様に点滴や治療せずに、自然の摂理に沿ってご自分の想ったようにナチュラルに最期を迎えること
こんな幸せなことはないのかもしれません
訪問看護師から見た「在宅看取り」の課題と現実
ご自宅で家族に見守られながら最期を迎えるということは、どなたにとっても理想的なことではないかと思います
しかし、実際はご家族の葛藤や恐怖、対応困難などでなかなかスムーズに看取りまで迎えられるご家庭は少ないように思います
どうしても、利用者さんが苦しんだり、不穏になったり、痛がったり、出血したり、意識がなくなってきたり、などのことがあると、看取ると決めていても、ご家族の不安が強くなり病院に入院させてしまうケースは多くあります。
訪問看護師もサポートとさせていただきますが、24時間診ているご家族の不安が強いと、なかなか難しいというのが実際です。
今回のKさんの様に、病院には行かず納得してご自宅で最期まで過ごすことができるケースは少ないですが、もし、このように過ごすことができれば、幸せなことなのかもしれません
💡 ご家族が後悔のない「在宅看取り」を迎えるためのポイント
- 本人の意思を元気なうちから話し合っておく万が一の際、「延命治療を望むか」「最期をどこで迎えたいか」をご本人・ご家族・主治医と共有(ACP:人生会議)しておくことが大切です。
- 「100%自宅で看取る」と気負いすぎない途中でご家族の限界を感じたり不安が強くなったりした場合は、病院や施設へ切り替えることも決して間違いではありません。
- 訪問看護や多職種(ケアマネ・ヘルパー)を頼り切る家族だけで抱え込まず、24時間対応の訪問看護などをフル活用して、ご家族自身の心身の負担を減らす環境を整えましょう。
執筆者プロフィール
mikakoro 在宅医療の現場で働く現役の訪問看護師です。 「おうち療養ガイド」として、床ずれ(褥瘡)ケアや日々の在宅介護で直面する疑問・不安を解決するためのヒントをお届けしています。家族だけで頑張りすぎない、無理のない在宅介護を応援します。

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