抗がん剤の点滴を〇クール受ける、という言葉は聞いたことがあると思います。
治療方針によっては、抗がん剤のクールとクールの間のお休みの時期に、退院してご自宅で過ごすケースは少なくありません。
薬剤の種類や、患者さんの体調や状態によって副作用はさまざまですが、副作用が強い場合や体調が優れないには、ご自宅で過ごすことに不安がある方も多いでしょう。
この記事では、抗がん剤治療中の体調管理と、訪問看護ができうるサポートについてその具体的な内容を、実際の事例を交えて解説します。
抗がん剤治療中に在宅で起こる副作用と対策(子宮頸がんSさんの事例)
73歳 女性 Sさん 子宮頸がん
Sさんの旦那様は数年前に亡くなられており、息子様との二人暮らしでした。
元々は飲食店を経営されていましたが、ずいぶん前に身を引いたとのこと。その後は、ご自宅で趣味の裁縫などされて過ごされていましたが、不正出血があり今回の診断に至りました。
手術は不可能との診断で、入院して放射線治療受けられていました。
その後、抗がん剤での治療が開始されました。点滴(抗がん剤)は1か月に1回だったため、1週間入院して抗がん剤を受けて退院する。それを3クール繰り返す予定でした。
抗がん剤の副作用で、倦怠感・口内炎・味覚障害・手足のしびれ・胃痛・脱毛などがあり、食欲が極端に減っていました。
食事は口内炎の痛みと味覚障害でほとんど食べることができませんでした。
食欲不振による点滴希望のため、地域のケアマネージャーからの依頼があり訪問看護が介入することとなりました。
口内炎・味覚障害と「高カロリー補助食品(エンシュア)」の活用法
抗がん剤1回目はそこまで副作用は強くありませんでしたが、2回目の抗がん剤の点滴後から、手足のしびれや口内炎や味覚障害が強く症状として出ていました。
味覚障害は、味がしないというよりは、ぜんぶ苦く感じる、というものでした。そのため、すべて美味しくないため、食事は進みませんでした。チョコでさえも苦く感じる、とのことでした。
また、口内炎もひどく、口腔内すべてに口内炎ができており何を口にいれても沁みるため、何も口に入れたくない、という状況でした。
そのような場合は、無理に食べることはせずに、高カロリー補助食品(エンシュア・Hなど)で経過をみてもらいます。
現在は、医師が医学的に必要と判断した理由が処方箋等に明記されない限り保険給付の対象外となっており、エンシュア・H 全額自己負担(10割)の場合1缶およそ約280円~380円が目安です。
- エンシュア・Hは1缶で約375kcalあります。
- ドロっとしており甘いので飲みにくい方も多いですが、その場合はコーヒーと混ぜたり、水で薄めて飲んでいただいたいます。
- フレーバーも色々な種類があるので、処方箋を出す薬局に相談していただければ選ぶことができます。
- 便が緩くなる方もいらっしゃるので、その場合は温めて飲んだり、水で薄めて時間をかけて飲んでいただきます。
ご本人の嗜好や飲み具合を見ながら、色々な種類の高カロリー補助食品を提案していくことができます。
手足のしびれと転倒を防ぐ環境整備
手の先は、ジンジンとしびれている状態が続き、趣味の裁縫も出来なくなりました。しびれが強すぎて、ペットボトルのキャップも開けることができませんでした。
足の裏は、ザラザラと砂を踏んだような感覚で、歩きにくくなっており、横になっている時間が増えました。
転倒のリスクが高くなるため、手すりの設置や家具の配置換えなど、ご家族ご本人と相談しながらすすめて環境整備に努めます。
また、ご本人に合った、日常生活の介護補助用品などの提案もさせていただきます。
治療への不安や心のケア
3回目の抗がん剤が終了したのち、抗がん剤が果たしてどの程度の効果があるのか評価するために、CT検査とMRI検査を行いました。
その結果、子宮頸がんのがんは小さくなってきているが、心臓の近くと肺に転移が見つかった、と言われたそうです。
4回目からは、今まで4種類の薬剤(抗がん剤)を混ぜていたが、2種類に減らしてしばらく続けてみる、と医者から言われました。
Sさんは、抗がん剤は3回で終わると思っていたため、このしんどい抗がん剤治療が、いつ終わるかわからない状態でずっと続くのか、とショックを受けておられました。しかし、治療を受けない選択はせず、抗がん剤治療は続きます。
抗がん剤治療はもうできません、と医師から言われると考えられる(一般的な)タイミングは、
採血の結果で腎機能、肝機能、骨髄抑制(白血球や赤血球が減り、感染しやすくなったり貧血になったりする状態)がひどくなった場合や
もしくは、CTで癌が小さくならず、全然効果がないと判断された場合などが多いです。
Sさんは、固形物をほとんど食べることができなかったため、退院後は訪問看護による週に3回の栄養の補助のための点滴を行っていました。
日常生活は息子さんがケアしてくれており、ヘルパーさまの利用はされていませんでした。訪問看護は週に3回、介護保険で1日1時間(1割負担で1000-1300円ほど)で訪問させていただいていました。
やはり点滴すると、身体が楽になる気がする、とのお声が聞かれ、点滴することで精神的にも安心されるようでした。
また、看護師が血圧を測定して体調を確認したり、相談や悩みなども聞くことができるため、Sさんにとって不安がいっぱいな時でも、すこし気持ちが楽になるようでした。
病院の融通の利かない体制のことや、医者の態度や病棟ナースの態度などの不満(毎月1週間の入院をくりかえしていると色々と感じることは多いようです)が会話の中で多く聞かれました。
そういう想いを「聞く」という立場も、訪問看護師にとっては大切な役割だなと感じています。
病院では、1人の患者さんと向き合って1時間もお話することは、絶対にありません。
私たち看護師も、1人の人間として、人生の先輩方の人生観や経験談をお聞きして、その方のことをより知ろうとし、向き合ってより良い看護へと繋げていきたいと考えています。
そして、色々な方の意見や考えをお聞きし、自分の人生についても考えることにつなげていきたいな、とも思っています。
現在は
Sさんは6回目の抗がん剤治療を終え、ますますやせ細り、副作用は消えず、しかし治療を乗り越えようとされています。
現在2回目のCT、MRI検査の結果を待っており、次からどんな治療にしていくか医者からの診断待ちです。
抗がん剤にはなんとか耐えられていますが、白血球の減少(易感染状態)、腎機能低下、血小板の減少(易出血状態)などもあり、今後治療を継続していけるかは、医師の判断とご本人の体力次第というところでしょうか。
訪問看護利用により、点滴や話を聞くことで精神的にも安心され、自宅での笑顔が増えました。
また、病院で言えない愚痴を吐き出すことで、次の治療に向かう活力を得られていたように感じます。
抗がん剤治療を支える「訪問看護」の役割と依頼方法
訪問看護を利用したいと思ったときは
- 抗がん剤治療を受けている病院の医師や看護師に相談する
- かかりつけの内科の医師に相談する
- ケアマネージャーに相談する
- 近くの訪問看護ステーションに直接相談してみる
- 地域包括支援センター
- 各自治体の福祉に関する相談窓口
などの相談の窓口や方法はいくつかありますので、迷っていたり困っている場合にはご相談ください。
困ったときはどうする?主治医・訪問看護師への連絡基準
基本的に、訪問看護ステーションは夜間も対応できる体制をとっており、夜間の緊急時連絡先に連絡するとつながるようになっています。
発熱や体調不良など、体調に変化があった場合や、判断に困ったことがあった時などに連絡いただければ、電話でのアドバイスや必要時には臨時訪問させていただきます。
意識がない、呼吸が苦しい、反応が極めて悪いなどの緊急性が高い場合は、訪問看護師よりも先に119番通報を優先していただくようにお伝えしています。
在宅医療で使える社会保障やサポート制度(高額療養費など)
在宅医療では、国の「医療保険」や「介護保険」、各自治体の「障害・難病支援制度」などを組み合わせて利用することで、自己負担を大幅に軽減できます。主なサポート制度と公的扶助は以下の通りです。
1. 医療費の負担を軽減する制度
| 制度の種類 | 対象となる人・状況 | 軽減される内容 |
| 高額療養費制度 | 1ヶ月の医療費が高額になった方 | 自己負担額に上限が設けられ、超えた分が戻る |
| 限度額適用認定証 | 事前に手続きができる方 | 窓口での支払いを最初から上限額までに抑える |
2. 介護・生活サポートを軽減する制度
| 制度の種類 | 対象となる人・状況 | 軽減される内容・支給内容 |
| 高額介護サービス費 | 1ヶ月に支払った介護保険サービスの利用者負担額が上限を超えた方 | 超えた分が払い戻される (一般的な所得の方の負担限度額は月額44,400円) |
| 高額医療・高額介護 合算療養費制度 | 同一世帯内で、1年間(8月1日〜翌年7月31日)に医療保険と介護保険の両方を利用した方 | それぞれの自己負担額を合算した額が、所得ごとの基準を超えた場合に支給される |
| 訪問看護療養費・付加給付 | 訪問看護を利用した方(独自の付加給付がある健康保険組合への加入など) | 健康保険から訪問看護療養費が支給される。また、組合によっては一定額(例: 月額2万円など)を超えた分が払い戻される |
3. 病気や障害に特化した医療費助成制度
| 制度・サポートの種類 | 対象となる人・状況 | 軽減される内容・支援内容 |
| 指定難病医療費助成制度 | 厚生労働省が指定する指定難病と診断され、一定の基準を満たす方 | 医療費の自己負担割合が軽減される |
| 自立支援医療制度 | 精神疾患などで継続的な通院・在宅治療が必要な方 | 医療費の自己負担が原則1割に軽減される |
| 心身障害者医療費助成制度 | 身体障害者手帳などを持っている方 (自治体ごとに設けられている制度) | 医療費の自己負担分が助成(無料または一部負担)される |
| 身体障害者手帳の交付 | 障害の状態に応じて手帳が交付された方 | 各種の税制優遇(所得税や住民税の障害者控除など)、タクシー代・補装具の補助などが受けられる |
| 生活福祉資金貸付制度 | 低所得者世帯、高齢者世帯、障害者世帯 | 生活再建や療養のための資金を、低利または無利子で借りることができる |
まとめ
Sさんのように、抗がん剤治療のために入退院を繰り返しながらも、在宅で少しでも安心して過ごしていただけるように訪問看護師がお手伝いをすることができます。
- 日常生活上のアドバイス
- 保清の援助(入浴などのお手伝いや体を拭くなど)
- 副作用が出たときの対応やアドバイス
- 点滴の実施
- 主治医やケアマネージャーとの連携
などを利用者さんに寄り添って行っていきますので、いつでもご相談ください。
mikakoro

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