在宅医療に携わっていると、長年の生活習慣を変えることが難しく、自己管理不足になり、こちらのアドバイスや約束を守っていただけない方がいます。
生活習慣が良くないため体調不良が続き、病院に何回も行って薬や点滴をします。そういう方々を訪問していると、年々増大している日本の医療費について危機感を覚えます。
今回は、自宅医療に携さわっている中で出会った、セルフケア不足の人々の実態と医療従事者として今後の日本の医療費について思うことお伝えします。
※プライバシー保護のため、年齢や設定・処方内容は一部改変・抽象化しています
訪問看護の現場で出会ったセルフケア不足の実態(事例紹介)
事例①:Tさん 63歳男性 糖尿病歴8年 生活保護受給
55歳のとき体調不良で病院に行くと糖尿病を指摘され、糖尿病薬を開始されていました。なかなか血糖値安定せず、血糖コントロール目的で60歳の時に総合病院の糖尿病内科に入院することとなりました。セルフケア不足の方で、入浴もほとんどせず、服やカバンなどに南京虫(トコジラミ)が多数目視でき、皮膚にも噛まれたような湿疹が多数あるのを発見されました。ケアマネージャー介入となり、入院中に害虫駆除など生活環境整え、退院後より訪問看護開始となりました。
手足のしびれ、ふらつき、震え、倦怠感、視力の低下など日常生活に大きな支障をきたすような症状あり。お仕事はできない状況です。
離婚されており家族とは疎遠で、身寄りなし。生活保護申請され、受給されています。
インスリン注射はアスパルトとグラルギンの2種類 内服治療薬 朝・昼・夕 にあり
食事は、自炊はせず、レトルトカレーやインスタントラーメン、菓子パンなど。お菓子、スルメなども好まれています。
再三の食事指導もむなしく、食事内容は変わらない状況 せめてお弁当など魚や肉や卵などの動物性タンパク質や野菜を、と説明していますが食生活は変わりません。
例えば、朝はモーニング、昼はなし、夕はスルメとお菓子と菓子パンなど。インスリンも打ったり打たなかったり。また、服薬もしたりしなかったり。
ある日は、インスリンを打ったが食事食べずに過ごし低血糖になり、ブドウ糖摂取されました。食生活やインスリンについて指導してもなかなか改善には至りません。
インスリンの針は使いまわしで「打てなくなるまで使う」「変えるのが面倒くさい」との言い分があり改善に至りません。消毒ももちろんしません。「膿んだことないから大丈夫」と言われています。
こちらの言うことは聞かないですが、「肩が痛い」「眠れない」など整形外科や心療内科などお薬はしっかりもらって、病院の受診は欠かしません。
このような食事内容やインスリンの打ち方(打ったり打たなかったり)をしているので、もちろん血糖値は安定せず、高血糖症状でしんどい、つらいという症状が出ます。血糖値も日によっては、600mg/dl以上の日もあります。ご本人は「血糖値高いほうが調子いい」との持論あり。
そうすると、日々の生活習慣は血液検査に悪く出てしまい、医者はインスリン量を増やす、お薬を増やす、ということになってきます。
自己管理不足のせいで血糖値が安定していないのに、医療費だけはどんどん増えていまいます。Tさんは生活保護受給しているので、医療費の負担はないので、何とも思っていない様です。
そのうち、腎機能悪化して透析になると思っています。そして、視力も低下して何らかの処置やサービスも受けるでしょう。
事例②:Mさん 75歳男性 Ⅰ型糖尿病歴15年 生活保護受給
60歳台ころよりインスリン治療を受けておられ、自己管理不足ということでケアマネージャーからの依頼で訪問看護開始となりました。
手足のしびれや倦怠感、のどの渇き、倦怠感は常にある状況です。手先の動きが鈍く、視力の低下もあり働くことはできないので、生活保護申請され受給されています。
MさんはⅠ型糖尿病で、生活習慣による糖尿病ではないが、それでもインスリンの打ち方や食事内容など、かなり自由きままにされており指導が必要でありました。
インスリンはアスパルトのスケール打ち トレシーバ35単位(朝) 朝に糖尿病のお薬あり
まず、気が向かないとインスリンは打たないという状況です。Mさんも「血糖値高いほうが調子いい」と言われており、そこまでインスリンのことは重要視されていません。
インスリンはご自分でやる気はないので、ヘルパーさんの毎朝の訪問での声掛けや、訪問看護師の週に2回の訪問での指導などをしています。ヘルパーさんと看護師でどうにか1日1回はインスリン施注できている状況です。
お食事は、ドカ食いで一気に食べてからは全く食べない日があります。もちろん低血糖になります。違う日には、1日中アメやお菓子などを食べる、という日もあります。もちろん血糖値は上がります。
すきな物(お菓子や果物など)しか食べず、栄養素や血糖値は気にしていません。「貧乏人は安いものを食べるしかないんだよ」とお肉などはほとんど食べずに炭水化物中心の食事内容です。
いくらアドバイスしたり、血糖値が大切か説明してもご本人が聞く耳もたないのでどうしようもなく、ナースとしては、高血糖や低血糖による意識障害が出ないか経過をみていくしかありません。また、インスリンの確実な投与(せめて朝だけでも)とお薬の確実な内服を目標にしています。
この方も、将来的には透析になる可能性が高いです。生活保護を受けているので、医療費の負担はありません。
事例③:Jさん 50歳男性 糖尿病歴25年以上 生活保護受給
20歳台から2型糖尿病と診断されており、インスリン・糖尿病薬継続されている。自己管理不足ということで、ご本人の希望もあり訪問看護開始となりました。
インスリンはグラルギン寝る前20単位 ヒューマログ3回/日 糖尿病薬 朝と夕にあり
手足のしびれや腰の痛みがあり、長時間の歩行は困難な状況で、お仕事は出来ない(やる気もない)状態です。
ご家族が糖尿病の家系だから、と知識は色々とお持ちの方でした。
まず、感覚で血糖値わかるから、と血糖測定はほとんどしません。そして、食事食べたり食べなかったりという生活のため、インスリンもきちんと打っていませんでした。
インスリンの針は使いまわしです。そして消毒もしません。事例①のTさんと一緒です。この方も「血糖値高いほうが調子いい」と言われています。
内服薬も朝しか飲まない、なんなら朝も忘れる日がある、といった生活です。
食事は自炊されていますが、朝から1日中「焼酎のビール割」を飲んでおり、常にめまいや頭痛や嘔気や下痢などの症状を訴えられています。お酒を減らすように言いますが、一時的に減ってもまた増えてしまいます。
頭痛などですぐに脳神経外科受診し、MRIなど撮ってもらいます。眠れないので、精神科で睡眠薬をもらいます。ちょっと耳鳴りがしたら、耳鼻科に行ってMRIまで撮ってもらいます。ちょっとの風邪症状で呼吸器内科を受診されます。
受診には非常に熱心な反面、日々の生活習慣の改善にはなかなか目が向かないのが現実です。これで生活保護なんです。自己負担はなしです。診てもらえることは全部調べてもらう、と言っています。
医療機関にかかる前に、まずは日々の自己管理から取り組んでいただくことの難しさを痛感します。この方も、今後は透析になるでしょう。
現場のナースが感じる「自己管理不足」と「国家医療費」の課題
以上のような自己管理不足、病識の低い方が一定数はいています。
もちろん、その方の人生でありその方の価値観なので、否定はせずに寄り添う形での訪問看護でありたいのですが、生活習慣で病状は改善する病気なので、良くなることを知っているだけに残念でなりません。
そして、日本の医療費は今後どんどん増え続けていきます。日本は今後も増税などで若い方々の負担は増え続けていくことでしょう。
まとめ:一人ひとりに寄り添う訪問看護と地域・ご家族ができる支援
どのようにすればこのような課題は解決できるのでしょうか。
一人ひとりの利用者さんに向き合い、時間をかけて根気強く関わっていくしかありません。また、ヘルパーさまやケアマネージャーさまとの連携のもと食事援助についても深くかかわっていけるように調整していく必要があると思います。
もしご家族や地域の支援などがある場合には、やはり食事の援助とお薬やインスリンの確実な投与を一番に関わっていただければと思います。
人間の行動が変わるときは、ほんとの体調の危機に直面したときか、人からの影響を受けたときだと思います。体調の危機に直面したときでは手遅れなので、人間の可能性を信じて少しでもセルフケア不足が改善してくれることを願って、看護師として関わっていきます。
日々の小さなその一歩が、日本の医療費の軽減につながると信じています。
当ブログの情報は執筆者の経験に基づくものであり、特定の診療や治療を推奨・指導するものではありません。受診や服薬については必ず主治医にご相談ください
mikakoro


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